The World
『The World』

 思考が鮮明になっていく。瞬きをするだけで周囲の全てを感じ取れる。まるで、世界が己の手中にでもあるかのような、そんな感覚がした。その代償だとでもいうように息を吸うたび体の中心が冷えていく。

 体の機能が停止しようとしている。
 ああ、死に向かっている。
 不思議と恐怖はなかった。大丈夫。覚悟は出来ている。ふっ、と息を吐いて力を一点に集中する。命が燃え尽きようとしているのが分かった。
 それでいい。
 どちらにせよ、もう後戻りはできないのだから。
「―――!!」
「―――――ッ!!!」
 遠くで自分の名前を呼ぶ声がした。一瞬そちらに目を向けて、心の中でごめんねを唱える。全部俺のエゴなんだ。大事だと思えるものをこの手で守りたいんだ。
 だから、だから止めないで。

 視界が、白く染まった。



以前ブログに投下したもの。連作もどきになったようなので上げてみた。
突発的な小ネタばっかぽろぽろ浮かんでくるから困る。
120309

『will』

 なんてきれいなのだろうか。
 純粋にそう思った。透明で、煌めいていて。それでいて刃物のように鋭い眼差し。瞳。その中に悲しみ、怒り―――激情が静かに渦巻いているのをみつけて自然と背筋が震える。
 守るよ、絶対、守るから。
 彼が口にしていた言葉が頭の中に響く。何故だか泣きそうになった。
 あたたかい。
 彼の姿をもう一度だけ目に焼きつける。奥の方がちり、と熱くなった気がした。

 ああ、美しいひと、



長編書きたいなーと思って書き起こしてみた一番最初に浮かんだシーン。
110316

『ひだまり崩壊』

 男はおもむろに喋り始めた。
「…あのさぁ、この子が何のために戦ってるのか、キミ達分かってる?自分自身のためじゃない、キミ達のために戦ってる。本当の本当に悔しいけど、この子はキミ達の事がとても大事みたいだからね。キミ達が"ここ"にいたいと思ってるから、"ここ"にいるからこの子は戦うんだよ。」
 冷たい空気が漂う中で、男の声はよく響いた。
「………なのに、何?勝手にこの子の居場所を決めて、勝手に責任押し付けて、勝手にいろんな感情ぶつけて。いろんなものを背負わされてこの子はもう潰れそうだ。…ねえ、キミ達がここまで自分勝手なことをしてきたのに罪悪感を感じていないのはこの子がまだ笑ってるからでしょ?…この子は優しいから受け入れるんだ、全部背負っていこうとするんだ。この子じゃなかったら、もうとっくにキミ達"ここ"にいられない。それを、この子の優しさに付け込んで。キミ達、何やってるの?ねえ、まだ足りない?まだ傷つけたりない?そんなにこの子を、壊したいの?」
 もう誰も、何も喋ろうとはしなかった。多くの者が後ろめたさを表情に滲ませながら下を向く。男はそれらに塵でも見るような視線を投げかけ、そしてもう興味などないとでもいうように目を背けた。
 それから足元に倒れている少年の傍にしゃがみこむ。壊れ物でも触るような優しい手つきで頭を撫でる。未だ意識を取り戻していないそれに泣きそうな笑顔を向けた。
「遅くなって、ごめんね。ごめんね。――……ごめん。」
 どうかもう、これ以上苦しまないで。
 男は願った。



気付くといつも誰かが長々喋ってるんだけど何故…
120309



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